5秒ルールは、メル・ロビンズが2017年の著書『The 5 Second Rule』で紹介したテクニックです。やるべきだとわかっていることをしようという気持ちがわいたとき、5・4・3・2・1と逆に数え、「1」で実際に体を動かします。頭の中で言い訳を考え始める前に動く、という考え方です。ロビンズは、朝ベッドから起きるために最初に使ったと話しています。短いためらいの瞬間に向いた方法で、起き上がる、作業を始める、会議で発言する、といった場面で使います。このルールそのものを調べた研究は発表されていません。動き出すきっかけにはなりますが、何から始めるかは教えてくれないため、小さく具体的な最初の一歩と組み合わせるとうまくいきます。
このガイドで扱うのはメル・ロビンズの方法です。床に落とした食べ物を5秒以内なら食べてもよい、というもう一つの「5秒ルール」は、研究の裏づけがありません。ラトガース大学の研究者は、一部の細菌は1秒未満で食べ物に移ると報告しています(Miranda & Schaffner, 2016)。
5秒ルールとは?
5秒ルールは、ためらいに止められる前に、よい意図を行動に移すためのカウントダウンです。やろうと思っていたことに手が止まっていると気づいた瞬間、5から1まで数え、「1」で体を動かします。立ち上がる、ノートパソコンを開く、スマホを手に取る、手を挙げる、といった動作です。
その背景にあるのは、何かをやろうと決めてから、自分でやらない理由を並べるまでの間は短い、という考え方です。準備ができるのを待っていると、先に言い訳がやってきます。カウントダウンは、気分に左右されないはっきりした「動く瞬間」を作り、数えることに注意を向けるので、自分と議論する時間が減ります。
5秒ルールの由来
アメリカの作家・講演家であるメル・ロビンズは、2017年に『The 5 Second Rule: Transform Your Life, Work, and Confidence with Everyday Courage』を出版しました。著書の中で、2009年の苦しい時期のことを書いています。仕事がなく、金銭的に厳しく、朝ベッドから起きるのがつらかったといいます。ある夜、テレビでロケット打ち上げのカウントダウンを見て、翌朝は5から数えてロケットのように起き上がろうと決めました。それがうまくいき、ほかの先延ばしにしていることにも同じカウントダウンを使い始めます。このルールを公の場で初めて話したのは、2011年のTEDxの講演でした(Meyer、getAbstractのレビュー)。
著書の多くは、ロビンズ自身や読者がさまざまな場面でこのルールを使った体験談です。先延ばしにも当てはめており、そこではストレスへの対処法として捉えています。心配や不安、自信についても書いています。自信については、先に行動することで自分自身の見方が変わる、と論じています。
5秒ルールはどんな場面で使うか
このルールは、やるべきことがすでにわかっていて、それをすることにためらっている小さな瞬間に向いています。よくある使い方は次のとおりです。
| 瞬間 | 「1」ですること |
|---|---|
| 目覚ましが鳴った | 床に足をつける。 |
| 仕事ではなくSNSを開きそうになった | スマホを伏せて、書類を開く。 |
| 折り返しの電話をしようと思っていた | 連絡先で相手の名前を押す。 |
| 会議で意見を言いたい | 「少し付け加えてもいいですか」と言う。 |
| 玄関にジムのバッグがある | バッグを持って外に出る。 |
| 難しいメールを先延ばしにしている | 返信を押して、最初の一言を打つ。 |
どれも、「1」でする動作はすでにはっきりしています。そういう場面でカウントダウンは最もよく働きます。
5秒ルールに効果はある?研究でわかっていること
5秒ルールそのものを調べた研究は発表されていないため、効果を直接示す証拠はありません。ロビンズはこのルールが研究に裏づけられていると説明していますが、関連する考え方については、しっかりした知見がいくつかあります。
意図することと実行することは違う
このルールが狙うのは、やろうと思うことと実際にやることの間のギャップで、このギャップはよく研究されています。47の実験をまとめたメタ分析では、人の意図が中程度から大きく変わっても、実際の行動の変化は小さいから中程度にとどまりました(Webb & Sheeran, 2006)。やる気は十分あるのに動けない人はたくさんいます。
前もって瞬間を決めておくと助けになる
このギャップを埋める方法として最も裏づけが強いのが、実行意図です。「Xが起きたら、Yをする」という形の計画です。94のテストをまとめたメタ分析では、こうした計画が目標達成に中程度から大きい効果を持つことがわかりました(Gollwitzer & Sheeran, 2006)。5秒ルールは、その小さな版のように働きます。「1に達したら、立ち上がる」という形です。この形そのものは検証されていませんが、理屈は似ています。
先延ばしは感情を避けること
心理学者フーシャ・シロワとティム・ピチルは、先延ばしを短期的な気分の修復として説明しています。作業を後回しにすると、いやな気分が今だけは消えるという考え方です(Sirois & Pychyl, 2013)。5秒以内に動き出すカウントダウンは、この逃避が働く時間を短くします。研究の妥当な読み方ではありますが、直接検証した人はいません。
不安を「わくわく」と呼ぶと助けになることがある
著書では、難しい瞬間の前のそわそわした感覚を「わくわく」として扱うことを勧めています。この部分には研究があります。カラオケ、人前でのスピーチ、数学のテストを使った実験では、「自分はわくわくしている」と言い聞かせた人は、落ち着こうとした人より実際にわくわく感が強まり、成績もよくなりました(Brooks, 2014)。
著書ではまた、カウントダウンが前頭前野(意図的なコントロールに関わる脳の部位)を働かせると述べています。この具体的な主張はこの技法について検証されていないため、研究の知見ではなくロビンズの説明として受け取るのが適切です。
5秒ルールをうまく使うコツ
5秒ルールは、数え始める前に最初の動作をはっきり決めておくと、最もよく働きます。
- 先に動作を決める。 1〜2秒でできる体の動きを選びます。ファイルを開く、立ち上がる、発信ボタンを押す、などです。
- ためらいに気づく。 合図は「あとでやろう」という考えです。
- 5・4・3・2・1と数える。 できれば声に出し、難しければ頭の中で数えます。
- 「1」で動く。 やる気が出るのを待たないこと。動くこと自体が目的です。
- 2分間続ける。 そのあと続けるかどうかを決めます。始めることがたいてい一番大変な部分です。
5秒ルールがうまくいかない場面
5秒ルールは動き出すきっかけにはなりますが、最初の動作が何かを教えてはくれません。「論文に取りかかる」に向かって数えると、「1」で机の前に座っても、目の前には同じ漠然として重い作業が残っており、ためらいはすぐに戻ってきます。カウントダウンは役目を果たしましたが、動き出す先が十分小さくなかったのです。
次のような場面では、効果はさらに小さくなります。
- 何をすればいいかわからないとき。 カウントダウンは代わりに決めてはくれません。作業が不明確で止まっている場合は、タスク麻痺のガイド(英語)を参照してください。
- 何週間も疲れている、気分が低いとき。 起きることや何かを始めることが、しばらくほとんどの日でつらいなら、うつや体の病気のサインかもしれません。医師に相談する価値があります。
- 失敗するテストになってしまったとき。 カウントダウンを逃しても、何かの証明にはなりません。もう一度数えるか、最初の動作をさらに小さくしてください。
5秒ルールと2分ルールの違い
5秒ルールは始める瞬間に役立ち、2分ルール(英語)は何を始めるかに役立つので、二つは同じ問題の別の部分をカバーします。
| 5秒ルール | 2分ルール | |
|---|---|---|
| 何か | 5・4・3・2・1と数えてから動く。 | 2分ほどでできる形にして始める。 |
| 由来 | メル・ロビンズ『The 5 Second Rule』(2017)。 | デビッド・アレン(2001)、この形ではジェームズ・クリアー(2018)。 |
| 解決すること | 始める瞬間のためらい。 | 大きすぎて始められない作業。 |
| 与えてくれるもの | 動く瞬間。 | はっきりした最初の動作。 |
| 弱点 | 何から始めるかを教えない。 | 始める瞬間に背中を押さない。 |
二つを組み合わせる方法
二つのルールは組み合わせると最もよく働きます。2分でできる最初の一歩を前もって決め、カウントダウンでそれを始めるのです。たとえば、次のようにします。
- 前の晩に一歩を書く。「第2章を開いて、粗い一文を一つ書く」。
- 時刻と場所を決める。「9時、机で」。
- 9時にカウントダウンし、「1」でファイルを開く。
- 一文を書く。そのあと続けるかどうかを決める。
Startrは同じ組み合わせをもとに作られています。ずっと先延ばしにしていることを打ち込むと、2分でできる最初の一歩を書きます。時刻と場所を選ぶと、その時刻に3・2・1のカウントダウンがあり、一時停止できない5分のタイマーが動きます。カウントダウンは5秒ではなく3秒ですが、考え方は同じです。短く数えて、はっきりした動作をする。Startrの使い方のページで各段階を説明しています。問題が始めることより「やりたくない」ことにあるなら、やる気を出す方法(英語)のガイドが役立つかもしれません。どの作業から始めるかを選ぶときは、カエルを食べるを参照してください。
よくある質問
5秒ルールの本は何について書かれていますか?
メル・ロビンズの本では、カウントダウンの説明のあと、起きること、先延ばし、自信、心配、不安にどう使うかが、主に体験談を通して示されます。中心にあるメッセージは、準備ができるまで待つとためらいに負けてしまうので、先に動く方法が必要だ、というものです。
5秒ルールは先延ばしに効きますか?
何をすればいいかがすでにはっきりしているときは、始める助けになります。作業そのものが大きすぎたり不明確だったりするときは、効果が小さくなります。その場合は、最初の一歩を2分ほどに小さくして、カウントダウンをその開始に使ってください。
なぜ前向きではなく逆に数えるのですか?
カウントダウンには終わりが決まっていて、「1」がロケット打ち上げのときのように「行く」合図として働きます。前向きに数えると自然な止まりどころがないため、数え続けて動かないままになりやすくなります。
床に落とした食べ物の5秒ルールと同じですか?
いいえ。別の言い伝えで、床に落ちて5秒未満の食べ物は食べてもよい、というものです。研究では、細菌が1秒未満で移ることがあるとわかっています。
Startrは、カウントダウンの行き先を作る先延ばし対策アプリです。ずっと先延ばしにしていることを打ち込むと、2分でできる最初の一歩が返ってきます。時間と場所を選ぶと、その時刻にカウントダウンがあり、5分のタイマーが始まります。登録は不要で、Webアプリはスマホでもパソコンでも使えます。
最初の一歩をもらう出典
- Robbins, M. (2017). The 5 Second Rule: Transform Your Life, Work, and Confidence with Everyday Courage. Savio Republic.
- Meyer, D. Countdown! Review of The 5 Second Rule by Mel Robbins. getAbstract Journal. journal.getabstract.com
- Webb, T. L. & Sheeran, P. (2006). Does changing behavioral intentions engender behavior change? A meta-analysis of the experimental evidence. Psychological Bulletin, 132(2), 249–268. doi:10.1037/0033-2909.132.2.249
- Gollwitzer, P. M. & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119. doi:10.1016/S0065-2601(06)38002-138002-1)
- Sirois, F. & Pychyl, T. (2013). Procrastination and the priority of short-term mood regulation: Consequences for future self. Social and Personality Psychology Compass, 7(2), 115–127. doi:10.1111/spc3.12011
- Brooks, A. W. (2014). Get excited: Reappraising pre-performance anxiety as excitement. Journal of Experimental Psychology: General, 143(3), 1144–1158. doi:10.1037/a0035325
- Miranda, R. C. & Schaffner, D. W. (2016). Longer contact times increase cross-contamination of Enterobacter aerogenes from surfaces to food. Applied and Environmental Microbiology, 82(21), 6490–6496. doi:10.1128/AEM.01838-16